適切な温度管理を行いましょう
水冷エンジンは冷却水(LLC)でエンジン表面を冷やしています 空冷エンジンは走行する時の風によって冷却されています
エンジンの内部はエンジンオイルで冷却されています
オイルパンの温度で93℃の場合 ピストンリング部分での温度は148℃になるということです
人間でも体温計で温度を測る場合 脇の下で測る場合とひたいで測るのとでは全く温度が違います
水温計は人間で言えば体温計 体温計は人の平均温度は36.5℃ですね 37.0℃になると微熱となり 38.0℃わずか1℃ですが高熱 39.0℃になると危険な状態と判断します
エンジンの適正温度は85~95℃が適正な水温です
人間にも当てはまるのですが体温も深部体温というものがあります 深部体温は体の奥深くの温度です
通常水温よりも油温が20℃ほど高いということ 水温100℃でオイルパン油温が約120℃
ピストンリング部分ではさらに約55℃ほど高くなり、155℃となります。
深部体温はエンジンでれば油温がそれに当たります 油温の適正温度は85~95℃です これ以上の温度になってくると エンジンにも影響が出始めます
それが熱ダレと言われる現象
暖機運転の目的はなんなのでしょうか?
暖機運転のポイントは 適正温度にならないと、エンジンの性能が引き出せないという事です
鍛造ピストンでも鋳造ピストンでもエンジンは85℃で設計されています 金属は熱が加わると熱膨張を必ず起こします
この事を見越してエンジン部品は設計されています 冷間時にピストンは横から見ると、台形状に上が小さく 下が大きくなっています
エンジンの熱が加わることで熱膨張し台形だったものが長方形の形状になります(バレル型(樽)と呼ばれるピストンもあります)
この時の油温が85℃で設計されています この温度を超えるとさらに膨張は進みシリンダーとの隙間がどんどん狭まっていきます
さらには、基本設計温度を超えた場合、膨張はあらぬ方向に膨張もします
冷却性の高いエンジンオイルが必要です
エンジンオイルの働きのひとつに冷却があります 走行中にエンジンの力が無くなってきた気がする…
それは気がするのではなくエンジン内部の温度があがり 油膜の保持が難しくなってきているからです
エンジンオイルに求められる働きは耐熱だと思っていませんか?
油温は人間で言う体温です 100℃を超えるようであれば熱対策を必ずとりましょう エンジンオイルの設計は100℃で設計されています どんなに優秀なオイルでも100℃を超えると たちまち熱で劣化してしまいます
化学合成オイルは熱に強い?
化学合成オイルは熱に強いと思っている人が多いはず しかしこれは誤解を生んでいます 化学合成は熱に強いのではありません
正確には
1:高温に対して分子が安定
2:せん断に対して強い
これを分かりやすくまとめると 熱に強いと言われる
高温に対して安定やせん断といってもすぐにわかる人はとても少ないと思います
誤解を生んでいる「熱に強い」という表現
誤解が生まれています
熱に強いのであれば油温も130℃でも大丈夫と思い込んでしまいます
ベースオイルだけで出来ているわけではありません
必ず添加剤を配合しないと エンジンオイルという製品にはならないからです
ベースオイル自体は熱に耐えても配合される添加剤は熱とせん断には弱いのです
ベースオイルは劣化しにくい
なぜなら分子が安定しているから
化学合成ベースオイルの寿命は60,000㎞とも言われています
鉱物ベースオイルの寿命は30,000kmとも言われています
このことからも化学合成オイルは分子が安定しせん断に強いと言えます
なのになぜ5,000㎞や10,000kmで交換する必要があるのか?
添加剤は熱とせん断に弱い
ベースオイルは劣化しにくいのです
ベースオイルよりも先に添加剤が寿命を迎えます
特に高温下では熱で劣化が早まります
高回転で回すとせん断されて添加剤は劣化します
だらか高耐久のベースオイルを使っても5,000㎞や10,000㎞で交換が必要になってきます
新興国では廃油を回収して遠心分離機にかけてゴミや汚れを分離させ 重油を生成します そこから添加剤を加えてエンジンオイルをつくるのです
製造方法にもよって違いはありますが どのオイルも例外なく添加剤から先に劣化していきます
大事なのは耐熱ではなく
冷却性の高いエンジンオイルです
同じ容積に分子が多いほど熱しにくく冷めにくい特性を持ちます 分子が大きいほど 熱しやすく冷めやすい特性をもちます
どちらが冷却性が高いのかを考えると 鉱物オイルなのです
特に空冷エンジンやハイパワーエンジンは冷却が重要な要素です
冷却性はバイクのギヤ入りにも関係します
車の場合エンジンとミッションは別々になっており 潤滑油の種類も違います ところがバイクのエンジンはエンジンとミッション(ギヤ)が同じオイルで潤滑させている事が一番違う要因です
エンジンが熱を持つと潤滑油も熱を持ち 熱を持つと油膜は薄くなります 薄くなった油膜はギヤの抵抗が増えてきます
この時にギヤの入りが悪くなり
・ニュートラルに入らない
・ギヤが硬い
・ギヤが抜ける
などの症状が現れます
特に空冷エンジンは走行しなければエンジンに風が当たりませんから 渋滞路では熱ダレを起こしてしまい パワーダウンしたり 速度を上げてワインディングロードを走るとギヤが入りにくくなったりします
熱が入るとサラサラに変化するオイルは空冷エンジンなどでは避ける方が無難です
製造方法でことなる冷却性と油膜の厚み
製造方法には2つの製造方法があるのはごぞんじでしょうか
1:通常製法
2:ノンポリマー製法
この2つの製法があります
冷却性は鉱物オイルが断然効率が高いのがわかると思います
なぜ化学合成オイルの通常製法が冷却性が落ちるのか?
ここで問題になるのがポリマー(増粘剤)
熱に弱くせん断に弱いという特徴があり ドロドロにしてもすぐにサラサラに戻ってしまいます つまり油膜は薄くなる傾向にあります
通常のエンジンオイルの作り方は1種類のベースオイル(基油)に添加剤を混ぜることで、エンジンオイルという製品になります。
そこで使われるのが、ポリマー(増粘剤)です。
水の様にサラサラとしたベースオイルにポリマー(増粘剤)を加えることにより、ドロドロにしているわけです
この添加剤が先に劣化していきます
例えば 水に片栗粉を入れるとドロドロになるのと同じ理屈です
通常エンジンオイルは水の様なサラサラなベースオイルにポリマーを混ぜてドロドロにし粘度を作り上げます VHVIは需要が大きい為通常製法だと鉱物よりも安価に生産が可能な場合もあります
ノンポリマー鉱物オイルRICH(リッチ)製法とは
ノンポリマーは文字通りポリマー(増粘剤)を使わない製法です
2種類のベースオイルを贅沢に使い粘度(ドロドロ)にしていきます そのため大変なコストをかけての製造を行う事になります
高い冷却性を実現し熱ダレを防止します
ノンポリマー製法はベースオイルの性能を引き出す製法
例えば レストランに行ったとします 大手チェーン店では味も価格も同じでないといけません
美味しく見せるために 発色剤を使い 保存期間を長くするために保存料を使います
これで体に優しいといえるでしょうか?
ノンポリマー製法とは余計な添加剤を使うことなく ベースオイル本来の性能を引き出す製法でエンジンにとって大変優しいオイルが完成します
ノンポリマーのメリット
- 熱に対してドロドロ加減が安定する
- 粘性が安定すると隙間を埋める力が強くなる
- 隙間を埋める力が強くなると旧車・過走行車のピストンとシリンダーとの隙間、ヘッドカバーとの隙間からのオイル漏れ予防ができるようになる
- 鉱物オイルだから冷却性が高く熱ダレ防止になる