B16BエンジンとB18Cエンジンブロックの特徴とチューニングにおける重要ポイント
高回転エンジンB16B/B18Cの魅力
- 高回転仕様で、軽量化されたコンロッドや高圧縮ピストンを採用していることに触れます。ストロークが短く、高回転域でのパフォーマンスが優れている。
トルク重視のB18Cエンジンの特徴
- 大排気量のエンジンで、トルクが太く、ストロークの長さが特徴。特に低回転域からの力強い加速に優れています。
B16B vs B18Cエンジンブロック仕様比較と性能分析
B16BとB18Cの基本的なスペック一覧
- デッキ高さ:どちらも212mmの共通設計
- B16BエンジンブロックとB18Cエンジンブロックは、同じデッキ高さを持つものの、パフォーマンス向上を目指したチューニングを行う際には内部コンポーネントに大きな違いがあるため、適切なパーツ選定が必要です。
- ボア×ストロークの違い
- B18Cは81mm × 87.2mm、B16Bは81mm × 77.4mmであることを表形式でわかりやすく表示します。
B18Cエンジンには、さまざまなバリエーションが存在し、それぞれが異なる市場や用途に合わせて設計されています。以下に主なB18Cのバリエーションについて説明します:
- B18C1 部品番号P72
- 用途: 北米市場向け(Acura Integra GS-R)
- スペック: 圧縮比10.0、170馬力。VTEC作動は4400 RPMで、吸気マニホールドが5800 RPMで切り替わります。
- 特徴: 他のモデルに比べて圧縮比がやや低く、より広いパワーバンドを持っています。
- B18C2 部品番号P72
- 用途: オーストラリアおよびニュージーランド市場向け(Integra VTi-R)
- スペック: B18C1とほぼ同様の仕様で、170馬力、圧縮比10.0です。
- B18C3 部品番号P72
- 用途: アジア市場向け(Integra)
- スペック: B18C1のアナログで、170馬力を発揮します。アジア市場専用のバリエーションです。
- B18C4 部品番号P72
- 用途: ヨーロッパ市場向け(Honda Civic VTiおよびPrelude)
- スペック: B18C1のヨーロッパ版で、同様に170馬力を発揮します。
- B18C5 部品番号P73
- 用途: Integra Type R(北米版)
- スペック: 圧縮比10.6、195馬力。高回転でのパフォーマンスを重視した設計で、VTEC作動は5700 RPMで発動します。ピストンやコンロッドが強化され、軽量化されています。
これらのエンジンは、同じB18Cファミリーに属しながらも、圧縮比や出力特性、VTECの作動タイミングなどに若干の違いがあります。市場や用途に応じて異なる仕様が採用されているため、エンジンの選択肢は幅広いです。
日本国内においては、B18Cとしか言いませんが、同じB18CでもType-R用と偽って販売している場合もあるので、注意が必要です。Type-R用は部品番号P73です。
B16BとB16Aのエンジンブロックの違い
最も注目すべき点はブロック長(デッキ高さ)です。具体的には、B16Aのデッキ高さは203.9mmですが、B16Bのデッキ高さは212mmで、約8mm高い設計になっています。B16Bは、B18Cと同じブロックを使用しており、これは高回転を実現するための設計変更の一部です。
この違いにより、B16BはB16Aよりもコンロッドが長く、これが高回転での安定したパフォーマンスに寄与しています。また、ピストン、クランクシャフト、コンロッドが異なるため、B16Bはより高い圧縮比と出力を達成しています。
この7mmの高さの違いが、エンジンの回転数やトルク特性に影響を与えており、B16Bは高回転域での性能が強化されています
チューニングガイド:B16BとB18Cをどう活かすか
B16B/B18Cチューニングの最適な方法
1. 吸排気系のアップグレード
- 高性能エアインテーク: より多くの空気を吸入し、エンジンの燃焼効率を向上させるために、冷気吸気システム(Cold Air Intake)や高流量フィルターの導入が効果的です。特にB16BやB18Cでは、高回転域でのパフォーマンス向上が見込まれます。
- 排気システムの改善: スポーツ触媒や高性能エキゾーストマニホールドを使って排気効率を高めることで、NAエンジンの高回転域でのパワーを引き出します。特に直径1.5~2.5インチの排気パイプが最適です。エキゾーストマニホールドが4in1タイプなのか、4into2into1タイプなのかで、高回転域での回り方が変わります。詳しくはエキゾーストマニホールドを解説していますので、ご参照ください。
2. カムシャフトのアップグレード
- ハイカムシャフトの導入は、特にB16B/B18Cの高回転域での出力を増大させます。B16Bのように元々高回転特性を持つエンジンでは、適切なカムプロフィールの選定が鍵となります。特に競技向けのカムシャフトを使用することで、VTEC作動後の高出力を得られます。ノーマルカム、ハイカムの原理を説明していますので、カムシャフトをご参照ください。
3. エンジンヘッドの加工
- ポート&ポリッシュ(気流をスムーズにするためにシリンダーヘッドの加工)や大口径バルブの導入は、吸気・排気効率を向上させ、パフォーマンスをさらに引き出すことができます。また、B16Bの吸気ポートはもともと拡大されていますが、さらなる加工で効果を高められます。エンジンヘッドはB16B、B18C5では違いますので詳しくはシリンダーヘッドをご参照ください。
4. 燃料システムの強化
- エンジン出力の向上に伴い、燃料供給も強化する必要があります。高流量燃料インジェクターやフューエルポンプのアップグレードが推奨され、特にインジェクターは約20%の余裕を持たせた容量のものを選ぶと良いです。
5. ECUチューニング
- 吸排気やカムシャフトの変更に合わせて、ECUの再マッピング(チューニング)は必須です。特にB16BやB18Cのような高回転エンジンでは、燃料と点火タイミングを最適化することで、全体のパフォーマンスを最大限引き出せます。HONDATAなどのECU管理システムがよく使われます
これらのアップグレードを段階的に実施し、B16BやB18Cの潜在能力を最大限に引き出すことが可能です。
B16BとB18Cのピストンデッキクリアランスの役割
ピストンデッキクリアランス(Piston Deck Clearance)は、ピストントップとシリンダーブロックのデッキ表面との距離を指します。このクリアランスは、エンジン性能に直接影響し、圧縮比やエンジンの信頼性に関連しています。B16BやB18Cエンジンにおいて、このクリアランスが適切でない場合、圧縮比が変化し、エンジンの燃焼効率やノッキング耐性に悪影響を及ぼす可能性があります。
B16BとB18Cのピストンデッキクリアランスの役割
このピストンデッキクリアランスを調整がチューニングの重要ポイント。
- 圧縮比への影響: ピストンがTDC(Top Dead Center, 上死点)に到達したときにデッキクリアランスが少なければ、圧縮比が高くなります。B16Bは高回転エンジンのため、クリアランスが厳密に管理されており、圧縮比が10.8:1と高めです。
- クリアランスの最適化: チューニング時に、ピストンデッキクリアランスを正確に計測し、必要に応じてシムやコンロッドの長さを調整することが重要です。特に、ヘッドを研磨した場合やブロックをリフレッシュする際には、デッキクリアランスが変わる可能性があるため、注意が必要です。
デッキクリアランスが適切であることにより、エンジンの圧縮効率が向上し、最適な燃焼が実現できます。これにより、パフォーマンスと信頼性が高まり、エンジンの寿命も延びます。
チューニングやオーバーホール時には、このデッキクリアランスの調整が重要なポイントとなります。
圧縮比の上昇はデトネーション(異常燃焼)のリスクを高めます。単純に圧縮比を上げるだけではなく、エンジン内部の構造や冷却が重要です。特にデッキクリアランスが狭いと、熱がその部分に集中しやすくなり、高温部が発生して異常燃焼を引き起こす可能性があります。
このことから、ハイパフォーマンスエンジンはピストンデッキクリアランスが”0”もしくは(-)マイナスになっている事が多い。
デトネーション(爆轟)対策としての考慮ポイント
冷却の強化:冷却水路の改善やオイルクーラーの追加。
冷却性の高い潤滑油:エンジンオイルは製品ごとに冷却性がまったく異なります。
点火タイミングの調整:遅角させて燃焼温度を下げる。
燃料マップの最適化:リッチな燃料設定で燃焼温度を抑制。
ガスケット厚の調整:クリアランスを微調整し、熱の集中を防ぐ。